所有するビルが古くなり、建て替えるか売るか判断がつかない、というご相談を受けることがあります。古いというだけで答えは決まりません。耐震基準や建物の状態を具体的に確認したうえで比べると、判断がしやすくなります。
新耐震基準と旧耐震基準の境目
建物の耐震性を考えるとき、まず確認したいのが建築確認を受けた日です。昭和56年(1981年)6月1日以降に建築確認を受けた建物は「新耐震基準」、それより前に確認を受けた建物は「旧耐震基準」に分かれます。同日に施行された建築基準法施行令の改正で、震度6強から7程度の大地震でも倒壊しないことを目指す基準に変わりました。注意したいのは、基準になるのが建築確認を受けた日であって、完成した日や登記簿上の建築年ではない点です。確認の時期がわからない場合は、建築確認台帳を所管の自治体で確認できます。
耐震診断・耐震改修は所有者の努力義務
現在の耐震基準に適合しない建物の所有者には、耐震診断と耐震改修を行う努力義務があります。
旧耐震基準の建物のうち、店舗や旅館など多数の人が利用する大きな建物(階数3以上かつ床面積の合計5,000平方メートル以上など)は、耐震診断をして結果を所管の行政庁へ報告する義務があり、報告された結果は行政庁が公表します。対象になるかどうかは建築の時期・規模・用途で決まるため、自治体の建築担当窓口で確認しておくと安心です。
旧耐震基準だと売りにくいと言われる理由
旧耐震基準の建物は、買い手が金融機関から借り入れるときの担保の評価が低くなりやすく、買い手の資金計画に影響します。地震への備えを気にするテナントが入居をためらうこともあり、建物をそのまま使う前提の買い手には検討から外されやすくなります。
上の階が住まいになっているビルでは、買い手がその部分に住む場合の住宅ローン控除で、耐震基準に適合している証明が求められることがあります。この控除で使う判定日(昭和56年12月31日以前に建築されたかどうか)は、新旧の耐震基準を分ける日とは別に決められています。
建て替えという選択肢
耐震性に不安があり、立地やテナント需要が引き続き見込める場合は、建て替えて新しい建物にする選択肢があります。建て替えには解体費用と建築費用がかかるため、完成後の賃料収入や売却額で回収できる見込みがあるかを、資金計画として検討する必要があります。建て替え期間中の収入が途絶える点も、見込んでおく必要があります。
売るという選択肢
建て替えの費用負担が難しい場合や、ビルの運営から離れたい場合は、現状のまま売却する選択肢があります。旧耐震基準であっても、立地や土地の広さを評価し、建て替えや用途転換を前提に検討する買い手は一定数います。耐震診断を受けていれば、その結果を資料として示すことで、買い手側の検討が進みやすくなります。
耐震診断を受けてから決める
耐震診断の結果は、構造耐震指標(Is値)という数値で示されます。国の目安では、Is値が0.6以上なら大地震で倒壊する危険性が低いとされ、0.3未満は危険性が高いとされます。最終的な判定は建物ごとの条件も含めて建築士などの専門家が行います。
診断を受けていない場合は、まず診断を受けてから、建て替え・改修・売却のどれが現実的かを検討すると判断の材料がそろいやすくなります。
決める前に整理しておきたいこと
建て替えるか売るかを決める前に、建築確認を受けた時期、耐震診断の有無と結果、テナントの契約状況、周辺の賃料相場を整理しておくと、どちらが合うかの比較がしやすくなります。複数の相続人や共有者がいる場合は、それぞれの選択肢の資金面の見込みを共有しながら話し合うことをおすすめします。
ハコツギでご相談いただけること
老朽化したビルについて、建て替えるか売るかを一緒に比べるご相談を受けています。耐震診断を受けていない段階でも、まずは現状の整理から対応できます。耐震診断や改修の具体的な手続きは、建築士や専門の調査会社への確認もあわせておすすめします。